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印刷経営研究所のブログ

2023.02.17

印刷会社のリスキリング

なぜリスキリングが必要なのか?

 リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること、とされています(リクルートワークス研究所)。

 特にデジタル化で生まれる新しい仕事に対応するためのスキル習得を指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)というコトバとセットで登場するケースが多くみられます。

 DXという言葉もよく聞くのであらためて整理しますと、DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(「DX推進ガイドライン 」(2018))となります。

 つまり、デジタルを使って競争優位を築こう、ということです。そのためにデジタルスキルをリスキリング(学び直し)しましょう、と政府や産業界が唱えているわけです。

リスキリング投資する会社だけが生き残る

 リスキリングするためには教育投資が必要ですが、一般的に資金が限られる中小企業において、効果や成果がすぐに出ない教育投資は後回しにされがちです。中小印刷会社においてもこれは同じで、印刷市場が縮小し続けている中ではなおさら難しい経営判断になるでしょう。しかし逆に言えば、多くの企業において難しい判断を思い切ってやれる企業だけが、生き残れるのだとも言えます。

 では、何を学び直せばいいのか?ということですが、政府や識者が言う「デジタルスキルを身につけよ」という漠然とした提言に流されるままに、プログラミングやデータ解析などを勉強したところで、現実的な成果は望めないでしょう。

 賢い中小印刷会社の経営陣がすべきことは、まずは目的を明確にしたうえで、その目的ためにはこのスキルが必要だという仮説を立てることです。「DXのためにリスキリング」というあいまいなカタカナに惑わされて不要なことに時間をお金を費やす失敗は、もうやめなければなりません。

印刷会社のリスキリング

 さて、印刷会社の社員は何をリスキリングすべきか?という問いに対して私はズバリ「マーケティング力」と「コンサルティング力」の2つだと断言します。そこでこの項では特に重要なマーケティング力のリスキリング方法について考察したいと思います(コンサルティング力については別の機会に説明したいと思います)。

 マーケティング力とは、顧客企業が販売する商品・サービスがより売れるようにするために、「顧客の顧客(エンドユーザー)」を理解し、そのニーズや悩みを把握する力です。そしてその商品・サービスの「売り」や「提供できる価値」をどのような方法で伝えるかを考え、その実行を支援する力です。何より、「いかに顧客視点に立って考えられるか」が重要になります。

マーケティング力習得の具体的方法

 マーケティングについて学べ、というとコトラー先生などの難しいマーケティング本を何冊も読んで勉強しなくちゃ、と考える人がいますが、本を読むのはとりあえず後回しでいいです。それよりも、もっと気軽に、身近な題材や経験からマーケティング力を鍛えることから始めて欲しいと思います。

 例えば近所のケーキ屋さんを題材に考えてみる、ということでもいいのです。このケーキ屋さんの主たる顧客層はどんな人たちで(ペルソナ)、どんな理由でこのケーキ屋さんに訪れるのか(顧客ニーズ)と想像してみてください。さらにその人たちはどんなライフスタイルで、その生活の中のどんな流れでこの店にやってくるのか。そして買った後、どこへ行くのか?誰と一緒に食べるのか?を考える。あるいは観察してみてください。

 また店側としては、その人たちに、どんなケーキやスイーツを用意すれば喜んでもらえるのか、どんな媒体やキャッチコピーを使ってプロモーションをするとその人たちに届きやすいのか。さらに、その人たちに当店のウリや特徴が正しく伝わり、行動を促すような魅力的なメッセージやヴィジュアルを作るにはどうすれば良いのか?について考える。そして総合的に見て、どうすればこのケーキ屋さんの売上が上がるのか、について考えてみるのです。

 こうやって、自分なりに想像し、仲間と一緒に議論することで、マーケティング力はグングン伸びていきます。まず自分の頭を使って考えることを習慣化して欲しいのです。そしてその結果、例えば「このケーキ屋さんではSNSでのプロモーションが必須だ」という課題が出てきた時点で、SNSプロモーションに関するマーケティング本を読み、課題解決の方法や考え方を学び取る、というステップを踏むことをお薦めします。ただダラダラと本を頭から読む時よりも、断然、学びのスピードが変わります。

 ここではケーキ屋さんを例にとりましたが、もちろん実際に取引のある顧客を題材に「マーケティング戦略」について議論すれば、そのまま顧客への企画書のベースができあがることになります。さらに言えば、自社を題材にこれをやれば、自社がとるべき戦略が明確になり、リスキリングとともに経営戦略が立案できてしまうという一石二鳥な状態になります。


 こうしてまず具体的な題材をもとに自頭で考え、疑問に思ったことや分からないことを解明するために本を読んだり、専門家に質問することで、実践で役立つスキルが身に着きます。外部の教育機関に社員を放り込んで「丸投げ」しても、たいていはその場だけで、「勉強になりました」といって終わります。

 それよりも、

①身近な題材で実践

    

②疑問点が出たら本やセミナーで勉強

    ↓

③さらに実践

というサイクルを回すことに注力して欲しい。そうすれば学びの質もスピードもグンと上がるはずです。

デジタルスキルもマーケティングスキルの後でOK

 リスキリングでよくテーマになるのが「デジタル対応」です。デジタル化する世の中の動きに合わせて、プログラミングやデータ解析、AIについてのスキルを身に着けることが重要とされますが、ちょっと待ってください。これらも、「マーケティング力」を身に着けた後でOKです。

 マーケティング力を身に着けることで、顧客ニーズと自社の強みの交点を俯瞰して見る力が養われ、「具体的に当社は顧客に対して何をすべきか?」が分かるようになります。そうすると身に着けるべき必要なデジタルスキルの内容とレベルが具体化されますので、真に実のあるリスキリングが出来るはずです。

 つまり、目的目標と現在地のギャップを知ったうえで、リスキリングの方向性と内容を具体化しましょう、ということです。目的目標を明確にするためには、第一に、マーケティング力を伸ばすことが重要となります。

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