やる気のない部下を嘆く前に、自分のやる気を上げよ
他の会社と同じように、印刷会社においてもマネジメントは大切です。いえ、市場が縮小し、生き残りをかけて戦う印刷会社こそ、よりマネジメントに力を入れ、個々の社員の力を結集しなければなりません。
マネジメントする際にリーダーシップと並んで重要なのがモチベーション、つまり動機づけです。
社員のモチベーションの低さを嘆く経営者がいますが、そもそも自分自身はモチベーション高く仕事に取り組んでいるでしょうか。経営者の仕事に対するモチベーションが低ければ、社員のモチベーションも低いのは当然のことです。
陸上の100メートルでジャマイカのウサイン・ボルト選手が9秒58という記録を出しました。一昔前までは10秒を切ることもできなかった人類が、今ではボルト選手を筆頭に9秒台で走る選手はゴロゴロ存在します。スポーツの世界では、新記録が出るとすぐに世界中の選手が新しい次元に入っていくという現象が起きます。
また、親や兄が偉大なスポーツ選手に出世した時、それを間近で見ていた子や弟なども同じ競技で大成する事例を何度か見聞きしたことがあると思います。これらは、物事を成すためには「身近なあの人ができるなら、自分にもできる」と真剣に思い込むことが成長のためには非常に重要だということを私達に示唆してくれます。
人間は身近な人に影響される生き物です。リーダーである経営者がモチベーションを高くして仕事に取り組んでいれば、社員さんたちのモチベーションは高まります。
他人を変えるよりも、自分を変えるほうが圧倒的に簡単です。社員の尻を叩いて無理やり業績を上げるよりも、経営者自らが業績を上げ、そのことにより社員のモチベーションを上げ、全体の業績を引っ張り上げることに目を向けてみてはいかがでしょうか。
モチベーションを一気にあげる方法
社員のモチベーションを上げるために、給料を業績連動型にしてはどうかという相談を受けます。確かに自分の頑張りによって業績が上がり、それに連れて給料も上がれば満たされた気分になります。逆に、頑張っても給料が変わらないのであれば、頑張る気がしないというのもわかります。
しかし、古くから言われているように、給料というものは不満を抑える働きはしても、やる気を大きく高める力はありません。つまり十分な給料を与えることで「給料が少ない」という不満を解消することはできますが、「給料が増える」ことをニンジンにしてやる気を高めることは難しい、と言われているのです。事実、成果主義の報酬制度を導入した企業はその多くが失敗に終わったと報告されています。
若い人に「会社を選ぶポイント」について聞いたアンケート調査を新聞などでよく目にしますが、上位に来るのは「やりがいのある仕事」であって、報酬というのは3番手か4番手となっている場合が多いです。「うちの会社は給料が低いから、社員のモチベーションが低い」というのはおそらく間違いで、仕事そのものにやりがいを感じさせていないことの方に問題の本質があると考えた方が良いでしょう。
経営者は会社の中にある仕事をやりがいのある仕事に変えなければいけません。やりがいがある、あるいはおもしろいと感じるのは集中して仕事に取り組んでいる時です。集中して仕事に取り組んでいる時というのは、「誰かを喜ばすために頑張っている」と思える時です。お客様のため、部下のため、上司のため、家族のため、対象は誰でもいいのです。お客さんの笑顔をみたいから、上司を喜ばせ褒められたいから、部下のはにかんだ嬉しそうな顔がみたいから、と思うからこそ仕事に集中して取り組めるのです。
もちろん、自分のためであることは言うまでもありません。しかし、人間というのは自分のために頑張ろうと思っても、どうしても自分を甘やかします。他人との約束は必ず守る人でも、自分との約束は簡単に破ってしまうものです。ですから、仕事とは誰かのために頑張るからこそやりがいが生まれるのだ、ということを経営者自らが伝え、教えていかなければいけません。
最も簡単な方法は褒めることです。褒められて嫌な気持ちになる人はいません。褒められるということは、自分を認められたということなので、褒められた人は自己重要感が満たされ、やる気に満ちてきます。自分を褒めてくれる人には自然と好意を抱くので、褒めてくれる経営者や上司に心を開き、信頼感を持つようになります。こうなると、自分の好きな人や信頼している人をもっと喜ばせたい、そして褒められたいという感情を持つことは至って自然な現象として起こります。経営者を喜ばせたいと思う社員は集中力を発揮し、仕事にやりがいを感じるようになるのです。
これから印刷会社は淘汰の時代に入ります。お客様から選ばれる印刷会社になるためには、モチベーションの高い社員が揃っているということが、重要な要素になることは明白です。
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