ナイ先生のメッセージから学ぶ

「ソフトパワー」という言葉を広めたハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が、5月6日に亡くなられたというニュースがありました。
ナイ教授は、アメリカ外交を長くけん引してきた方で、日本にも深い理解を示していた「知日派」として知られています。
さて、この「ソフトパワー」とは何か。そもそもパワーとは「他人を自分の望むように動かす力」のこと。その手段は、大きく3つに分類されます。
- 威嚇(強制力)
- 金銭的報酬(インセンティブ)
- 魅力(惹きつける力)
このうちの3、「魅力によって人を動かす力」が“ソフトパワー”です。
ソフトパワーを構成するのは、
国で言えば、
・その国が持つ文化
・国内社会の状況
・政治施策や外交方針
の3つである、とナイ先生は言います
例えばアメリカは、開かれた文化や人権を大切にする姿勢といった魅力(=ソフトパワー)によって、世界の国々から支持を集めてきました。
ところが、トランプ政権の登場以降、外交は威嚇中心の姿勢に転じ、信頼は損なわれ、ソフトパワーは急速に失われつつある--そうナイ先生は強く懸念していました。
印刷会社の“魅力”とは?
ソフトパワーは会社経営にも大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。
現在、印刷業界は、大きな転換期を迎えています。
紙の需要の急激な減少、価格競争の激化、デジタル化の加速、人材不足……。
印刷市場が縮小していけば、当然印刷会社の数も減少を強いられていきます。そんななかで、お客様や社員に選ばれる会社であり続けるためには、「魅力」つまり、企業としての“ソフトパワー”を高めることがますます重要になっています。
例えば:
- 時代に合わせた提案型営業や、クリエイティブの力
- 何らかの分野で輝いていること
- 社員がイキイキと働いてること
- 地域社会に根ざした存在感や人の温かみ
こうした魅力に、お客様も、社員も、そして未来の仲間も惹きつけられるのです。
何かと提案してくる印刷会社、社員がいつも気持ちよい挨拶をしてくる印刷会社、時々その取り組みがメディアに取り上げられ、注目を集めている印刷会社。
こういうソフトパワーを持った印刷会社になることは、縮小していく印刷市場の中で生き残るための重要な要素になるはずです。
御社の「社員を動かす力」は何ですか?
では次に、ナイ先生の理論を、会社の内部、つまりマネジメントに当てはめてみましょう。
会社組織が社員を動かす手段として、次の3つのパワーがあります。
- 怖がらせて言うことを聞かせる(威嚇)
- 給料や待遇で釣る(報酬)
- この会社で働きたい、ついていきたいと思わせる(魅力)
令和のいま、「威嚇」型の経営は減ってきてはいますが、現場に緊張感を強いてしまうような職場文化はまだ残っているかもしれません。
「報酬」型のマネジメントも限界があります。お金で集めた人は、もっとたくさんのお金を求めて去っていきます。もちろん、待遇改善は重要ですが、それだけで人が定着し、活躍するわけではありません。
大事なのは、やはり“魅力”――ソフトパワー。
- 社員が誇りを持てる会社か?
- 経営者が信頼でき、尊敬されているか?
- 会社として目指すビジョンが、共感を呼ぶものか?
- 「この人たちと一緒に仕事したい」と思われているか?
こうした要素が、社員のやる気や定着につながり、結果的に業績やブランド力にも跳ね返ってきます。
「印刷会社は未来がない・・・」と自らあきらめてしまっている印刷会社には、
ますます社員も客も寄り付かなくなるでしょう。
厳しくとも未来に向けて行動し続ける風土が社員と会社を輝かせ、
ソフトパワーをより強くするのです。
“ソフトパワー”は現場にも宿る
京セラの稲盛和夫氏はこう語っています。
「従業員のやる気を引き出すには、経営者が社員に“惚れられる”存在にならなければならない」と。
逆に言うと、経営者に魅力(=ソフトパワー)が無いから、社員はやる気を出す気がしないのかもしれません。皆さんの会社ではいかがでしょうか?
社員が惚れて、この人と一緒に働きたい、この人から褒められたい、この人のために頑張りたいと思わせてくれる経営者であれば、組織は結束し、強くなっていくのだと思います。
もちろんこれは、経営者や役職者だけの話ではありません。
営業、製造、制作、どの現場でも、「この人と仕事がしたい」「この人がいるからお願いしたい」と思われるような人間的魅力、仕事への誠実さ、柔軟な発想といったソフトパワーが求められています。そういう人であふれる印刷会社であれば、次のステージに進むためのアイデアが湧いてくるかもしれません。
ナイ先生は「ソフトパワーだけで十分とは言っていない」とも語っていました。
必要なのは、ソフトとハードの“バランス”です。
印刷業界でも、技術や品質(ハード)と、人の魅力や関係性(ソフト)の両方があってこそ、真に選ばれる企業になれるのではないでしょうか。
ソフトパワーは、磨けば必ず光ります。
これからの時代、必要とされるのは、まさに“惹きつける力”です。
御社には、どんな魅力がありますか?
どんな未来を描いていますか?
一緒に、もっと強く、魅力ある会社をつくっていきましょう。
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02. そもそもコンサルタントとは何なのか?
03. うちの印刷営業パーソンがコンサルタントになれるのか?
04. 売上アップのアイデアを持っているビジネスパートナーになるには?
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